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もののけ姫の森9

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月22日(日)10時04分26秒
  私は明日、縄文杉を見に行くべきか迷っていることを話した。

太「う〜ん。山に登って杉を見るだけだからねえ。
  私も縄文杉は見たことないのであまり言えないんですけど…」

私「杉は昨日今日でたくさん見たし、太鼓岩で満たされたし…」

太「じゃあヤクスギランドに行く位でいいんじゃない?」

私「ヤクスギランドねぇ…ネーミングがチープなんだよなぁ」

太「遊園地みたい(笑)」

私「職場の人に縄文杉を見てくることを期待されている気がするんだよね〜
  だから妙な使命感が…」

太「屋久島と言えば縄文杉だし(笑)」


私の中に“絶対に見たい動機”が無ければ、
太子さんにも“絶対にお奨めする理由”も無かった。

あげくに私は

「早起きするのキツいんだよね」

などと言い出した。

日帰りで縄文杉を見に行く場合、宿を5時には出発しなけれだならなかったからだ。
 

もののけ姫の森8

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月22日(日)09時06分2秒
  太子さんはもともと鹿児島の他の島の生まれらしかった。

今は神戸に住んでいるが、派遣社員として屋久島に来ているとのこと。
道理で詳しいはずだった。


※ 注 ※
彼女の名前は不明。
“太子さん”というのは太鼓岩に因んで付けた仮称です。


お互いにどんな交通手段で屋久島まで来たのか、
何日滞在するのかなど話しつつ下山した。

途中、一人の外国人男性にシャッターを押すのを頼まれ引き受けた。

やけに軽装で人の良さそうな欧米人だった。

頭には和風のハチマキ、その上には麦わら帽子。

“くぐり杉”という、幹の空洞部分をくぐれる木の中に入って記念写真を撮り、
彼はご機嫌だった。

嬉しそうな人を見ていると、こちらも嬉しくなる。

そこに自分も貢献したかと思うとなおさらだ。

人間とは“役に立ちたい”存在なのだ。
 

もののけ姫の森7

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月22日(日)08時58分9秒
  やがて私も太鼓岩を降りた。
ルートは2つあったがはずだが、1つしか分からなかった。

10分ほどで2つのルートの合流点に到着した。
せっかくなのでセルフタイマーで、そこにあった杉と一緒に写真を撮っていた。

すると誰か降りて来た。

少し照れ臭くなっていると、果たしてそれは太子さんだった。

後から降り始めた私が、異なるルートでさっさと来てしまったため、先にこの合流点に達したようだ。

私「あれ、そっちから降りたんですか?」

太「一応こっちが正しい下山ルートです(笑)」

私「さっき“ヤッホー”って叫んでみたんだけど、聞こえちゃいました?」

太「もちろん。
  叫び返そうかなと思ったけど、何となくやめちゃいました」

私「返して欲しかったな〜(笑)」

太「こっちにとても大きな石があるんですよ。
  まだだったら、見て行きません?」

私「じゃあ、行ってみようかな」

私は太子さんの後についてその岩とも言うべき大きな石を見に行き、
それから何となく二人で下山した。
 

もののけ姫の森6

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月21日(土)10時55分17秒
  太鼓岩の上でついに一人になった私は、

“この景色は俺のもの”

状態だった。

私は「ヤッホー」と大声で叫んでみた。

こだまは小さく響いていたような、返って来なかったような、微妙な感じだった。

それにしても大自然と真向かうというのは何と気分良く、
また反面何と気恥ずかしいものなのだろう。

ヤッホーと叫ぼうとして山々と真っ向から対峙した瞬間、
私は自分自身を全て見透かされているような気恥ずかしさに襲われたのだった。

眼前に広がる広大な自然が、私一人を見ている…
そして見透かしている…

そんな心境になりながら、二度三度と峰々に向かって、大きく叫んだ。
 

もののけ姫の森5

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月21日(土)10時49分4秒
  太鼓岩の上には30分以上いただろう。

この時季にこんなに晴れるのは珍しいとのこと。
これだけ見晴らしのいい太鼓岩は初めてだと件の女性(以下、太子さん)は言う。

何組かの観光客が訪れては去っていった。

太子さんはお弁当を取り出し、ゆっくりと食べている。

私は飽きることなく眺望を味わっていた。

雲、頂、森、川…

視点を上下させたり左右にしたりしながら、
あるいは立ったり座ったりしながら。

私と二人、最後まで岩の上に座っていた太子さんもやがてその場を去った。

太鼓岩の上で、私はついに一人になった。
 

もののけ姫の森4

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月21日(土)01時21分42秒
  太鼓岩は、確かに絶景だった。
岩の上に立つまでもなく、岩の向こうに広がる風景を見ただけで息を飲んだ。

すでに一組のカップルと女性が一人いて、口々にその眺望を誉め称えていた。

…と、見るとその一人で来ていた女性というのは今朝私が鹿の存在を教えた際に妙に素っ気なかった人だった。

「あれが宮乃浦岳、右が〜」

今朝の無愛想な態度とはうって変わって、私に教えるともなくそう話し出した。

私「詳しいですね〜。ここには前に来たことあるんですか」

女「3〜4回ですね」

どうやら鹿児島県出身らしかった。
景色について分からないことを聞くと色々説明してくれた。

調子に乗ってカメラのシャッターを押してくれないかと頼むと、快く引き受けてくれた。

「ここのボタン押して下さい…あれ、充電切れちゃった」

ここぞという時に私の携帯電話はエネルギー切れを起こした。

慌てて充電して数分後再度依頼した。

「すみません、改めて。
 このボタンです…また切れちゃった」

コントでいう“お約束”のようなやり取りに周囲の人がドッと沸く。

結局三度目の挑戦にしてやっと私は太鼓岩からの眺めと一枚の写真に収まることが出来た。
 

もののけ姫の森3

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月21日(土)00時36分13秒
  もののけ姫の森はなるほど確かに幻想的だった。

「漫画のような…」

と言いたいところだが、ここがモデルとなっているのだから漫画のようで当たり前だ。

幻想的な森は、思っていたよりも続く。
が、私の後ろからは誰も来ない。
件のカメラマンも、一向に来る気配がない。

不思議に思っていたところ、たまたま前方から一人の男性が来た。

私「もののけ姫の森って、どこまであるんですかね?」

男「え、看板ありませんでした?」

私「いや看板は見つけたんですけど、これがいつ終わるのかと…」

男「その看板の辺りだけみたいですよ、もののけ姫の森っていうのは。
 これはもう太鼓岩へのルートですから」

私「太鼓岩? お勧めですか?」

男「個人的には縄文杉よりいいですね」

お礼を言って別れ、太鼓岩なるものを目指すことにした。

そう言えば、今朝出掛けに宿の女将さんにも太鼓岩を勧められた記憶があった。

だが正直なところ

「ネーミングがイケてないな」

などと思いあまり身を入れて聞いていなかったのだ。

登ること約15分。
太鼓岩が見えて来た。
 

もののけ姫の森

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月20日(金)10時24分24秒
  一眼レフというのだろうか、ゴツいカメラにすっぽりビニール袋を被せて防水しながら写真を撮っている男性が目についた。

私「カメラ、大丈夫ですか。
  濡れません?」

男「まあ、なんとか(笑)」

私「カメラマンさんですか?」

男「はい、水の写真ばかり撮ってます」

私「じゃあ屋久島なんかお誂え向きですね」

男「はい、そのために来ました(笑)」

細身でおとなしそうな男性だったが、先ほどの女性に比べると格段に愛想が良かった。

手段は違えど同じ表現者として通じ合う部分があったのだろう。

更に言えば

“水の写真ばかり撮っている”

という彼のこだわりに好感を持った。

そう、私がインスピレーションをいただくのも“水”が多いからだ。

邪魔しては悪いと思いあまり話しかけなかったが、途中何度か言葉を交わした。
 

もののけ姫の森

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月20日(金)10時13分28秒
  2日目。

私は前日訪れた白谷雲水峡に再び足を踏み入れた。

今度は違うコースを登るためだ。

アニメ映画『もののけ姫』に出てくる森は、この森林をもとに描かれているらしい。

正直なところ、

“〜のロケ地”
“〜の舞台”

に類する謳い文句は妙に安易な気がしてあまり好きにはなれないのだが、
美しいと評判なので見てみたくなったのだ。

雨は降っているが、昨日のようなどしゃ降りではない。

私は気楽に歩き始めた。

すると、すぐに野生の鹿を発見した。

私もなんだかんだでシンプルに“非日常”が嬉しい。

カメラに収めて満足すると、後から来た女性にも教えた。

確かその日私が乗ってきたバスに、途中の停留所から乗車してきた人だった。
20歳台後半くらいだろうか。

私「鹿がいますよ」

女「はあ」

地元の方だったのだろうか。
あまり興味無さそうに、足早に通り過ぎて行った。

道は昨日とは比べ物にならないほど楽だった。

気ままに写真を撮りつつ歩いた。
 

いなか浜3

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月20日(金)09時04分29秒
  浜のすぐ近くに「うみがめ館」というのがあった。

興味をそそられた私は中に入った。

海亀の生態、産卵について紹介されていた。

産卵の観察会なども催されているらしい。

そう言えば小学生のころ、亀を飼っていたことがあった。
妙に好きで、残念ながら死んでしまうとしばらくしてまた飼った。
結局、入れ代わりで3〜4匹の亀を飼ったことになるだろう。

そしてその頃、海に棲むという海亀に強く惹かれていたものだった。

ちなみに小学一年生時には、リスを飼いたがっていたこともはっきり覚えている。

もう20年以上も前の、
そして久しい間思い出すことも思い出す必要もなかったそんな記憶を辿り、
ひとり懐かしがっていた。

「なんであんなに亀が好きだったんだろう?」
 一体、亀の何が俺を惹き付けたんだろう?」

言葉にすると大袈裟かも知れないが、そんなことも考えつつゆっくりと館内を見て回った。

ここで働いているのはボランティアの方が多いらしい。

帰りがけに海亀Tシャツを一枚購入した。
 

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