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いなか浜2

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月19日(木)06時38分19秒
  あるいはそれほどまでにこの浜の“佇まい”が私に合っていたのだろう。

砂浜に立ち、座り、歩き、ぼんやりと時を過ごした。

この浜はまた海亀の産卵地として有名らしい。

それが頭にあったせいかもっと穏やかな波を想像していたのだが、実際には違った。

思ったよりも激しい波で、下手をすれば飲まれるのではと思ったほどだ。

後で聞いた地元の方の話だと、波が荒いので海水浴には向かないとのこと。

海亀の産卵という神秘的イメージ。
目の当たりにする激しい波。

そのギャップがまた、私を惹き付けた。
 

いなか浜

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月19日(木)06時24分30秒
  屋久島上陸初日、午前中でいきなり遭難しかかった私は、午後は砂浜へ行くことにした。

「いなか浜」というらしい。

私の宿からバスで30分あまり。
きれいな砂浜が広がっていた。

今回、私が旅行先を屋久島に決めたのにはもちろん理由があった。

私はいつも“水”にインスピレーションをもらっていた。

海、波、川…


その中から作品を作り上げてきた。

「では、違うものをもっと吸収できれば?
 自分の中での“開けていなかった引き出し”の扉があくのでは?」

鬱蒼と生い茂る木々や植物、そうしたものにたっぷり触れることによって、今までとは違う何かを自分の中に蓄積したかったのだ。
そんな思いからの屋久島行だった。

しかし長い間自分の身に付いて来たものが頭をもたげる。

砂浜に降り立った瞬間、

「これだ」

と思ってしまった。

あるいはそれほどまでにこの砂浜が自分に合っていたのかも知れない。
 

白谷雲水峡14

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月19日(木)02時26分59秒
  ようやく入り口辺りに出ると、親子らしい女性二人がいた。

あまりの悪天候に、山に入るのを躊躇しているらしい。

そんな山中から私が現れたので、驚いていた。

「上の方まで行かれたんですか!?」

「はい、でも途中で道しるべを見失って大変でしたよ。
 遭難するかと思って半泣きでした。
 これ、鳴ってるの雷ですよね?」

「そうですよ〜
 よく戻って来れましたね〜」

「お互い気を付けましょう」

リアルに死を意識したせいか、私の足はかすかに震えていた。

ゴアテックス製だとかいう丈夫なレインウェアのズボンには思い切り穴が空いていた。
自然と格闘した爪痕だった。

生きて帰って来られた。
それだけで嬉しかった。


=附記=

悪天候時の山歩きには十分に気をつけて下さい。
そして出来るだけ避けて下さい。
自然破壊にも繋がるとても迷惑な行為だと実感・反省しました。
ご心配をおかけした皆さま、申し訳ございませんでした。
そしてありがとうございました。
 

白谷雲水峡13

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月19日(木)02時09分21秒
  繰り返すが、どしゃ降りで薄暗い状況。

傘などとっくに差すのはやめていた。
濡れることより命が惜しかったからだ。

必死に山の斜面を登りつつ、

「これで駄目なら、もう仕方ない」

と思っていた。

何度も足を滑らせつつようやく明るみへ、高みへ出た。

見渡すと…道しるべがあった。

記憶を辿れば、そこは確かに往路で通った道であった。

ルートを外れた私は、全くの反対側をさまよっていたのだ。

もしあのまま斜面にへばりつきながら無謀な前進を進めていたら…

私は山を下った。
やはり、誰にも会わなかった。
 

白谷雲水峡12

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月18日(水)20時42分19秒
  “執着”

その時の私を一言で表せばそれに尽きるだろう。

生きることへの執着である。

笑わば笑え。

「詩は死を意識することから始まる」

との持論を掲げ、最愛の恋人が他界したあと自ら首をくくろうとした私が、

“自らの意志に反する死”

に直面して“生への執着”を剥き出しにしているのだ。

自分自身に滑稽さを感じつつ、それでも山の斜面を登った。
 

白谷雲水峡11

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月18日(水)20時28分9秒
  職場の上司には、土産はいいから無事に帰って来るようにと言われていた。

「じゃあ、局長にはお土産いらないですね(笑)」

と軽口を叩いて出て来たのだが、どうやら“無事に”どころか帰れそうにない。

「俺が遭難したら、悪天候時の規制が厳しくなるかも知れない。
それがために観光客が減ったら島民の皆様にご迷惑をおかけすることになる。
 なんとしてもそれだけは避けねば!」

「詩人・石川仁木は世間的には“自称・詩人”で終わるのか」

「死後俺に冠せられる名は“詩人気取り”“旅人気取り”か?」

「結局、俺は死が怖いのか?」

様々なことが頭をよぎった。

そして必死に山の斜面にしがみつき、登った。

「これで駄目なら仕方ない」

そんな気持ちだった。
 

白谷雲水峡10

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月18日(水)02時48分43秒
  道は分からない。
いま自分がどこにいるかも分からない。
どこに向かっているかも定かではない。
計画は頓挫。
期待は崩壊。

まさになす術なくなった。
他に何をすればいい?

相変わらずのどしゃ降り。
雷鳴はまた時折ピカと光る。

落胆して上を見上げた。

「人はこうして遭難するんだろう。
 まさか自分がこうなるとは…」

するとはるか上方に光が見えた。
光というのは大袈裟だ。
辺り一面薄暗いなかで、やや明るくなっている場所。
恐らくこの峰の頂のようなところに違いない。
つまりあそこに出れば道は分からないまでも何らかの手掛かりを得ることができるかも知れない。

私は山の斜面を必死に登り始めた。
 

白谷雲水峡9

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月18日(水)02時33分49秒
  リュックサックの側まで降りた…が、辺りに人影はない。

どこだ?
どんな勇敢な人がこの悪天候のもとリュックを放り出して遊んでいるんだ?

…私の期待、希望は一気に崩壊した。

それはリュックではなく、打ち上げられた流木だったのだ。

私は二重の意味でショックだった。

期待した“誰か”がいなかったこと。
そして遠目とはいえ流木とリュックの区別さえつかなくなっていたこと。

まさしく藁にもすがりたい私の心が、期待を込めて流木をリュックに見させていたのだ。

私は自分の心が追い詰められていることを実感した。
 

白谷雲水峡8

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月18日(水)02時22分23秒
  斜面を降り始めたが、私の“沢伝いに下山する”という計画が無理なことがすぐに分かった。

流れに沿う岩盤はとても歩けるようなものではなく、また岩盤に乗り移ることさえ困難なことが遠目にも明らかだった。

やむなくまた山の斜面を前に進み始めた。

すると、流れに沿う大きな石にリュックサックが置いてあるのがかすかに見えた。

有難い。

こんな悪天候にたぎる流れの側で遊ぶ変わり者(失礼m(_ _)m)がいるとは!
そして恐らくは山の熟練者に違いない。

助けてもらえる。
そうでなくとも一人でないだけ心強い。

喜び勇んで、転げるように斜面を駆け降りた。
 

念のため…

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月17日(火)18時15分40秒
  無事生還しています。
ご心配おかけした皆さま、大変申し訳ございませんでした。
 

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