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白谷雲水峡7

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月17日(火)05時00分37秒
  私は登山届を出していなかった。
だから行方不明になっても、誰もそれと気付かない。
捜索もされないだろう。

そしてこのコースは、危険だから今日は入らないように言われていた。
だから後から来た人に助けられるということもない。
仮に後から来る人がいても、ルートを外れた私を見つけられるかは疑問だ。

360度見渡す限り道のない山の斜面で、私は途方に暮れた。

このまま下山出来なかったら、遭難者だ。
そして現時点でその可能性は高い。

…と、下方に水の流れがある。

「この流れ伝いに下山できるはずだ」

木々に掴まりながら、足を滑らせながら、山の斜面を降り始めた。
 

白谷雲水峡6

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月17日(火)04時42分32秒
  何の手掛かりもなく歩き始めたのだが、全くの当てずっぽうだった訳ではない。

自分なりに「恐らくこっちだろう」と思う方に進んでいた。

が、道しるべは一向に見つからない。
道は…明らかに道ではなかった。

気が付くと、山の斜面を歩いていた。
いや、へばりついていたと言う方が適切かも知れない。

何度足を滑らせたか分からない。
尻餅もついた。

思いきって歩き出した私の賭けは、明らかに失敗だった。
 

白谷雲水峡5

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月17日(火)04時31分0秒
  道しるべを見失っても、はじめはそれほど大事だとは思っていなかった。

無理もない。
行きはきちんと来られたのだから。

しかし徐々に事の重大さに気付いてきた。

最後に確認できた道しるべの位置から、どう見渡しても次の道しるべが見えないのだ。

高低のある道なき道。
どこをどう進めばいいのか、降りればいいのか皆目見当がつかない。

ちょっと進んでは「これは違う」と戻り、それらしいルートを見つけたつもりでいるとすでに引き返した道だったり…
同じ所を20〜30分ぐるぐるしていた。

そして

「これじゃ埒があかない」

と感じた私は道しるべを探すのを諦めて思いきってずんずん歩き始めた。

道しるべも、道もない山の中を。
 

白谷雲水峡4

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月17日(火)04時07分25秒
  「ここまでは行こう!」

と最初に決めていた当たりに差し掛かると、どうしようもなく雷鳴が強くなった。
当然、どしゃ降りだ。

もはや写真を撮る余裕もない。

しばらくの間、誰とも出会っていないことが怖さを募らせた。

予定通り引き返すことにして、かなり急いで歩き始めた。

が、ほどなく道しるべである枝に巻かれたピンク色のリボンを見失ってしまった。
 

白谷雲水峡3

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月16日(月)23時18分49秒
  それでもしばらく歩くと、鳥の鳴き声がしてきた。

種類など分からない。

「夏鳥? いや夏山の鳥か?」

鳥の鳴き声を励みに歩き続けた。

しかしコースとはいってもほとんど道ならぬ道。
どしゃ降りの雨。
雷鳴。

道は更に“道”とは言えなくなってきた。
 

白谷雲水峡2

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月16日(月)23時01分58秒
  山中の枝には、道に迷わないよう所々にピンク色のリボンが付けてあった。
それを見失わなければ問題はない。

それにしても天候が悪い。
雨はどんどん強くなるし、雷鳴も頻度を増すばかりだ。

入り口の所では私の後ろにも何組かの登山者がいたはずだが、一向に来る気配がない。
恐らく管理事務所の人に止められたのだろう。
この悪天候ならそれも当然だ。

原生林コースというだけあって、道は険しい。
むしろ“コース”などというお気軽な名称が恨めしいくらいだった。

私の前にも後ろにも、人は全くいなかった。
 

白谷雲水峡

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月16日(月)22時39分52秒
  屋久島に到着してすぐに白谷雲水峡という所に行った。

かなりのどしゃ降り。
いくつかあるコースのうち

「原生林コースは危険だから行かないように」

と言われたにも関わらず、その原生林コースに足を踏み入れてしまった。

駄目と言われれば行きたくなる…人間だもの。
危険と言われれば行きたくなる…詩人だもの。

しかしスタートしてほどなく、雷鳴が鳴り響いた。
 

上陸間近

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月16日(月)06時52分55秒
  屋久島が見えてきた。
船笛が鳴っている。
 

出港

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月16日(月)05時45分39秒
  船内放送があり、再び船が動き始めた。

種子島の港を出港し、屋久島を目指すのだ。

夜、消えることのなかった室内灯がいつの間にか消灯されており、
代わりに丸窓から薄く光が射し込んでいる。

航行する船体の震えを味わいたく、つまりは波を感じたく、再び横になる。

丸窓のすぐ下だ。

先程と比べると、驚くべき速さで明るくなって来ているのが分かる。

窓のこの丸い形も恐らく実用的な意味はあるのだろうが、どことなく象徴的だ。

あと一時間半。
ついに屋久島に到着する。
 

夜更けの船室

 投稿者:石川仁木  投稿日:2008年 6月15日(日)23時47分19秒
  目覚めると、船の揺れは治まっていた。

「ずいぶん穏やかな波になったものだ…」

そう思いつつ外を見ると、停泊中のようだった。

そして何気なく船室を見渡すと……他には誰もいなかった。

種子島経由で屋久島に到着するこの貨物船。

四・五人いた私以外の乗客はみな、種子島で降りたらしい。

貸し切り状態。
今この船室は、俺のものだ。
 

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